物理検層比抵抗検層

RESISTIVITY LOGGING比抵抗検層

物理検層

比抵抗検層は、地層の電気物性である比抵抗を測定する検層の総称です。比抵抗検層にはノルマル検層、マイクロ比抵抗検層、デュアルラテロ検層、インダクション検層などがあります。これらは測定方式や坑壁からの探査深度、深度分解能等が異なり、地層の特性や測定の目的に応じて使い分けています。
比抵抗検層では坑井内で電気化学的に自然発生する自然電位(SP)も同時に計測することができます。

主な種目

ノルマル検層

ノルマル検層(電気検層/ノルマル法)は、導電性のある液体に満たされた坑井内で地層に電流を流し、地層の比抵抗を深度に対して連続して測定する方法です。図に示すように検層ツールと地表に電流電極A、Bと電位電極N、Mをそれぞれ配置します。等方均質媒体の地層では、電流電極Aのまわりの等電位面は球面となり、その電位Vは均質の地層の比抵抗ρに比例します。つまり、 ρ=4πAM・V/I です。
ここで、AMはA極とM極の間隔を示します。AMを電極間隔またはスペーシングと呼び、異なるスペーシングを用いて測定することにより異なる探査深度の地層比抵抗を得ることができます。実際の測定においては、AM1(スペーシング:25cm)、AM2(スペーシング:100cm)の電極配置の機材を用います。
ノルマル検層では、同時に地層の自然電位(SP)を連続的に測定します。自然電位の測定では、坑井内電極M1と地上の電極N間の電位差を記録します。自然電位の発生機構としては、イオンを含む地層水が流動するときに生じる流動電位と、塩分濃度の異なる坑内流体と地層水との間でイオンが移動することにより生じる電気化学的電位があり、大部分が後者の効果であると考えられています。

マイクロ比抵抗検層

マイクロ比抵抗検層は、電極A、電極M1、電極M2をそれぞれ1インチ(2.54cm)という短い間隔でゴム性の絶縁パットの中央に埋め込み、これを坑壁に圧着させながら坑壁近傍の比抵抗を坑壁に沿って連続的に測定する方法です。
パットのアームはモーターで開閉するシステムとなっており、このアームの動きにより坑径の変化も測定できます。
泥水を利用した掘削では、浸透面にできた泥壁の比抵抗(1インチ-ラテラル法;M1~M2)と泥水濾過水を含んだ浸透層の比抵抗(2インチ-ノルマル法;A~M2)の関係を利用して浸透層を判定します。つまり、2インチノルマル比抵抗の値が1インチラテラル比抵抗よりも高い値を示す箇所が、泥壁が形成されている箇所であると考えられます。
泥水を利用した掘削では、電極間隔の長い電気検層(ノルマル法)で検知できない割れ目等の検出に有効です。

デュアルラテロ検層

デュアルラテロ検層は、制御電極を用いて測定電流を強制的に地層中に流しこむように工夫されています。この検層ツールは、探査電極(主電極)Eと2つの制御電極(ガード電極)G1、G2で構成されています。制御電極G1、G2は、探査電極Eと等電位になるように設計されており、EG1間とEG2間の電位差が0になります。このため、探査電極Eからの測定電流は、制御電極G1、G2から流れる制御電流によって上下から水平方向に集束され、地層へ強制的に流しこまれます。
測定電流を集束して地層へ流し込むため、坑内流体の影響をほとんど受けず、坑壁深部の見掛けの比抵抗を測定できます。したがって、ウォッシュアウトが存在する坑井環境や、比抵抗が低い泥水の環境(例えば塩分濃度の高い海水泥水など)でも有効に測定できます。
また、ノルマル検層(電気検層/ノルマル法)と比較して高い垂直解像度を有するため、薄層の検知に優れているほか、フラクチャーが発達した硬い岩石中では、フラクチャーの指標にもなります。

高分解能インダクション検層

インダクション検層は、ノルマル検層(電気検層/ノルマル法)やラテロ検層とは大きく原理が異なります。送信コイルに交流電流を流すとツール周辺には磁場が生じます。この磁場が地層中を通過すると、ループ状のうず電流を誘起します。うず電流はさらに2次的な磁場を誘起し、これを受信コイルで受け取ります。地層中に発生したうず電流は坑井を取り囲むようなループで、その大きさは地層の導電率に比例します。導電率の逆数は比抵抗ですので、導電率を測定することは、結果的に比抵抗を測定することになります。
インダクション検層は、坑内泥水の影響を受けにくく設計されていて、泥水の浸入が及んでいない領域の比抵抗(≒真の比抵抗)を得ることができる検層種目です。非導電性の坑内流体を使用している場合でも地層の比抵抗を測定することができます。また、導電率を測定しているので、比抵抗の低い地層の比抵抗測定に有効です。
高分解のインダクション検層ツールは、複数の受信コイルを使用することにより2種類の探査深度で測定できるようにデザインされています。探査深度の深い測定値をディープ、比較的浅い測定値をミディアムと呼び、さらに電極間隔の短いラテロ型検層ツールで同時に測定される最も浅い探査深度の比抵抗値をシャローと呼んでいます。